2018年08月07日

ペットを入院させた後の動物病院内の実態

院長が近くに住んでいない動物病院は入院の管理が問題


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前回は自分の動物病院と離れて暮らす院長の意図について触れましたが今回はその場合に支障となることの例を挙げます。
予告無しの急患も一つですが日常的に問題になるのが入院している動物の夜間や休日の管理です。
一般的な動物病院(平日の日中に診療して夜は閉める診療)の場合、病院が閉まっている間の入院動物の管理は誰が行っているかというと院長及びその家族が中心です。休日当番くらいは勤務スタッフに仕事の一つとして設定できても、毎日の夜の見回りまで頼むのは酷ですので一番近くに住んでいる院長一家が行うというのがもっとも多いパターンです。

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100点と0点の入院動物の管理


動物病院の夜の見回りという作業、重要な仕事かどうかというと入院動物がいる場合には超がつくくらい大事なのですが全ての動物病院で適切に行われているかというとそうでもありません。そういう私も当院での夜間の入院動物の管理に点数をつけるならば100点満点中70点くらいかなと思います。ただし100点の対応を行っている院長にはいまだかつて私は会ったことがありません。ですが0点の管理をしている院長はわりとよく出会います。
100点と0点の管理・・私が個人的に考えるそれぞれの対応について紹介します。

100点の管理・・それは動物に異変が起きればすぐに気付いて飛び起きて処置することなのですがほとんどの動物病院は少人数勤務で経営していますのでこの対応をするのは不可能に近いと言えます。もし実現しようと思えば夜間つきっきりで入院動物の様子を観察するスタッフを一人雇いなにかあればすぐにこちらを起こす、もしくは夜間勤務の獣医師を雇うということになるのですが夜間専門で働ける動物病院スタッフを常に確保するというのは簡単ではありません。給与も高額になってしまいますので入院動物1~2匹では入院費より人件費の方が高くついてしまいます。大病院で入院動物が常にぎっしりいる状況でもなければ現実的ではありません。

0点の管理・・病院を閉めたらそれっきり。入院動物がいても翌日の朝まで誰も病院に来ません。そんなばかなと思われるかもしれませんがちらほら実在しています。そして私の知る限りではそのような動物病院の大半はテナントや病院のみが建っている獣医師がそこに住んでいない動物病院です。理由は敢えて説明するまでもないかもしれませんがそこに通うのが面倒くさ重労働だからです。まあそもそも自分の時間を大事にしたくてわざわざ病院と離れた場所に住居を構えるようなことをする人が入院動物の管理だけはものすごくマメというのも考えにくい話です。

当院の入院動物の対応・・獣医療と自分が過労死しない範囲での妥協点として当院での対応としてはまず見回り。それ以外に入院動物のケージ毎に見守りカメラを設置しネットを介してスマホやパソコンでいつでも観察できる状態にしています。このカメラは動物病院用というわけではなく家庭用のペットや子供の監視用カメラとして販売されていますが最近のこのようなワイヤレスのカメラの高性能化と低価格化は驚くものがあります。赤外線装備で暗くても見える、音声通信可能、遠隔操作でカメラ向きやズームを調整できるetc1万円未満の価格でよくこれだけの装備を備えてるものだと感心します。
古き良き時代を懐かしむこともありますがこういう面に関しては時代の変化に感謝です。

鳴り響く輸液ポンプの警告音


夜間の見回りや監視カメラで発見される異常事態はじつはそのほとんどが動物の急変ではありません。では度々発見される異常事態はなにかというと輸液ポンプのエラーです。入院するような状況の動物の多くは前肢に留置針を設置しての静脈点滴を続けていることが多いのですがその流量は輸液ポンプという機械で管理しています。この機械なのですが様々な理由でエラーで停止してしまいます。もっとも起こりやすいエラーは閉塞。動物がくるくる回って輸液チューブをねじねじにしてしまっても閉塞しますし、猫が前足を折りたたむ香箱座りという姿勢をとるだけも閉塞エラーになることがあります。冬はチューブ内に気泡が大量発生して気泡エラーという状態での停止も多発します。
ですので持続静脈点滴を行っている動物が入院している場合は見回りは必須。頻繁に止まる輸液ポンプのエラーを解除するために度々病院に出向いてそれでも停止している時間を全く作らないというのは難しいものです。

じゃあ病院を閉めて次の日の朝までそれっきりという病院であればどうなるか・・下手すれば半日以上もエラーで点滴が止まった状態になる可能性もあるのです。

動物を入院させる場合に聞くべき質問


重症の動物を入院預かりする場合に飼い主さんからときどき痛いところを突かれたと感じることがあります。それは「夜中もずっと見て頂けるんですか?」という質問。飼い主さんにとってみれば入院するなら当然という感覚なのかもしれません。これに対する答えはすみませんがNoです。定期的な見回りは行うもののその間の急変には対応できないと正直に当院の対応の仕方を伝えます。夜勤当番などはないため夜は一人であること、睡眠をとらなければ流石に日常業務を続けていくことは不可能といった動物病院事情も必要であれば伝えます。

「夜間つきっきりなのか?」という質問はほとんどの動物病院でNOという返答があると思われるので有益な質問とは言い難いですが自分の愛犬、愛猫を入院させる場合にむしろ確認してほしい質問があります。

それは「夜間の入院動物の見回りはどのようにしてるんですか?」という質問。

というのも前述しましたが病院によっては診療時間が終わってから始まるまでの12時間以上ほったらかしという経営方針のところもあります。
治癒率と入院の効果というのは十人十色なので比較しにくいのですが同じ子が全く同じ病気と治療計画で入院した場合、かたや数時間おきに異常がないか見回りをする病院、かたや半日以上輸液ポンプのエラーさえ確認せずにほったらかしの病院。どちらが有意義な入院期間を過ごしているのかという点は言うまでもないことです。

動物病院の裏側は院長の人間性次第


安価なネット媒介タイプの監視カメラの普及により最近ではその気になれば住居と病院が離れていてもこまめに入院動物全頭を監視することは可能です。ですが結局一晩に何度も起こることもある点滴エラーを解除するためには見るだけではなく必ず病院に出向く必要があります。出向く必要がある以上は住居と病院が離れていない方が好ましいのは言うまでもありません。テナント等で不本意ながら住居が別という院長なら頑張って通うでしょう。ですがやる気がピークのはずの開業時点で数ある選択肢の中から敢えて住居を分けた人っていうのは本当に臨床獣医やる気ありますか?と思ってしまうんですね。時間外対応にしても入院の管理にしても病院が閉まった後に自分が何をしているかっていうことを飼い主さんに胸を張って言えるでしょうか。もしかしたら人としては付き合いが良くて周りから好かれる人なのかもしれませんが少なくとも獣医としては私が飼い主だったらかかりつけ医にはしたくないかな・・。

動物病院に通う際に飼い主さんに知っておいて欲しいのは世の中には完璧は無理でも最善を尽くす大多数の獣医師だけではなく自分の時間が何よりも大事という獣医師(院長)が存在するということ。入院させたからといって盲目的に最善の治療が行われていると安心するのは決して正解ではありません。

かかりつけの動物病院を決める際は「この病院の院長はどこに住んでいるんだろうか?」「この病院の建て方にはどういう意図があるんだろうか?」ということを頭の片隅に入れておくと少し役に立つかもしれません。

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posted by ぎゃずも at 17:45| 動物病院の選び方 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする